遺言がなければ大変です
遺言は、一般には「ゆいごん」と言いますが、法律上の用語としては「いごん」と読みます。
遺言書は、民法で厳格に様式が定められた一種の公的な性格をもつ文書で、亡くなる前に私的な心情を書き残す、いわゆる「遺書(いしょ)」とは違います。
なぜ、遺言書を書く必要があるのでしょうか。それは、ご自身の意思を遺族に伝えることができるのに加えて、遺族間の相続をめぐるトラブルからご家族や大切な人の生活を守ることができるからです。
このような方はぜひ遺言を
次のような方は、特に遺言を準備しておかれることをおすすめします(一部)。
相続人について
・夫婦間に子どもがいない
・独身で子どもがいない
・一緒に暮らしていない先妻・先夫との間に子がいる
・家族仲があまりよくない
・できれば財産を与えたくない相続人がいる
例えば、子どもがいない夫婦のどちらかが亡くなれば、その配偶者とともに、亡くなった方の親兄弟や甥姪などが相続人になります。
配偶者に全財産を相続させたい場合は、その旨を遺言しておきましょう。兄弟姉妹や甥姪については遺留分がないので、遺言通りに財産を相続させることができます。
遺産分割について
・嫁がよく尽くしてくれたので財産を渡したい
・気がかりで援助が必要な子どもに多く財産を渡したい
・家業や事業を継がせるために、後継者に財産を渡したい
・教育や福祉事業など社会の役に立つことに寄付したい
・自宅の土地・建物以外に特別な財産がない
例えば、介護に尽くしてくれた嫁であっても、養子縁組をしていなければ、相続人にはなりません。
遺言によって、相続人でない嫁や世話になった知人などにも、財産を渡すことができます(遺贈)。
遺言書を書かかずに、何もしないまま亡くなれば、ご本人の意思とは関係なく、遺産を相続する人(法定相続人)と相続する割合(法定相続分)が決まってしまいます。 →ブログ「相続人になるのは誰?」・「法定相続分とは」
相続時に、思わぬ方が相続人になったり、不公平感が生じてトラブルにならないよう、あらかじめ準備しておく必要があります。
遺言は法定相続に優先します
遺言がないまま相続が発生すれば、相続人全員で遺産分割協議を行って、法定相続分に従いつつ、話し合いによって遺産を分けることになります。
一人でも納得しない人がいれば話し合いはまとまりませんし、遺族間の力関係で押し切られてしまうかもしれません。顔を突き合わせて同じ席につくこと自体が難しい場合もあるでしょう。
遺言書は、相続人に保障された遺留分には勝てませんが、原則として法定相続に優先します。そのため、遺産分割のために相続人同士が集まって話し合う必要はなくなります。
遺言書は、民法で厳格に様式が定められていて、どんなものでもよいというわけではありません。法的に有効で、内容がはっきりと分かるものであることが必要です。
内容があいまいなため、そこからもめごとが起こるようでは本末転倒です。できるだけ専門家の助言を得るなどして、しっかりとした遺言書を作っておきましょう。