相続人のはずが相続できない!?
民法には法定相続人の定めがある一方で、相続人として認められない場合があります。相続欠格と推定相続人の廃除によるものです。
当然に認められません -相続欠格-
相続欠格とは、つぎのような一定の事情がある場合には、当然に相続人としての資格を失うものです(民法891条)。このための手続きは必要ありません。
- 故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡させ、または死亡にいたらせようとしたために、刑に処せられた者
- 被相続人の殺害されたことを知って、告発または告訴しなかった者(判断能力がない場合、または殺害者が配偶者もしくは直系血族の場合を除く)
- 詐欺または脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者
- 詐欺または脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者
- 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者
相続欠格は、遺贈にも準用されるため遺贈をうけることはできません(民法965条)。
ただし、その者の子が代襲相続することはできます(民法887条2項)。
上項の3.~5.は遺言行為への干渉で、それだけ相続における遺言の効力が大きいことを示しています。
もし、争いになれば、欠格にあたる事実に加えて、相続人が相続に関して不当な利益を得る目的があったことを明らかにしなければなりません。
遺言書の作成は、、公正証書などによって、できるだけ安全な方法を検討しましょう。
被相続人の意思によります -推定相続人の廃除-
推定相続人の廃除は、被相続人の意思によって、家庭裁判所がその推定相続人(相続を開始したとき相続人となるべきもの)の相続権を奪うことです(民法892条)。被相続人が、廃除請求の申立てを行います。
廃除の意思表示が遺言でなされた場合は、申し立ては遺言執行者によります(民法893条)。
廃除の対象は、遺産の一定割合の取得を保証する遺留分をもつ推定相続人(配偶者、子と直系卑属、直系尊属)に限定されていて、遺留分のない兄弟姉妹は入りません。
廃除の理由となるのは、①被相続人に対する虐待、②被相続人に対する重大な侮辱、③推定相続人の著しい非行です。ただし、どのような行為が廃除原因になるかは、被相続人の主観的な感情や解釈で決められるのではなく、家庭裁判所が個別に客観的に判断することになります。
被相続人はいつでも決定した廃除の取り消しを家庭裁判所へ請求することができます(民法894条1項)。
相続欠格とは違って、遺贈には準用されないため、廃除された推定相続人に対しても遺贈することができます。
廃除された者の子も代襲相続人になります(民法887条2項)。
推定相続人の廃除は、遺留分の権利も奪う制度であるため、裁判所による廃除事由の判断も厳しくなされていて、認められないケースも少なくないようです。