公正証書遺言のつくり方

2016年10月19日(水)5:17 PM

 公正証書遺言は、遺言者が伝えた内容を法律の専門家である公証人が作成して、公証役場に保管される遺言書です。費用と手間がかかりますが、他の遺言方法と比べて、最も安全性の高い遺言方法といえます。

作成方法には決まりがあります -遺言書作成の要件-

 民法では、次のような要件が定められています(民法969条)。

1.証人2名以上の立会いがある
 公正証書遺言の作成には、証人が必要です。
 ただし、次のような人は証人にはなれません(民法974条)。
①未成年者 ②推定相続人および受遺者並びにこれらの配偶者および直系親族 ③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人。

2.遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する
 基本は公証役場に出向いて、公証人に遺言内容を口頭で伝えることになります。
 実務上では、公証人と事前に打ち合わせをして案文を作成してもらい、当日はそれを確認する手続きになります。
 遺言者が、口がきけない人・耳が聞こえない人である場合は、通訳を利用することができます(民法969条の2)。
 また、公証人に病院や自宅に来てもらって作成することも可能ですが、職務管轄区域内の公証人でなければなりません。この場合、日当・交通費に加えて、5割加算の公証人手数料が必要になります。

3.公証人が遺言者の口述を筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させる

4.遺言者及び証人が承認の後、署名して押印する
 遺言者が病気その他の理由で字を書くことができない場合は、公証人がその旨を付記することで、署名を省略することができます(民法969条4号ただし書)。
 押印は、遺言者については印鑑証明書によって本人確認を行うため、通常は実印によって押印します。

5.公証人が方式に従ったものであることを付記して、署名して押印する
 遺言書は、原本・正本・謄本の3部が作成され、原本は公証役場に保管され、正本と謄本が渡されます。
 万一、遺言書を紛失した場合でも原本は公証役場に保管されていますので問題はありませんが、公証役場に請求すれば再発行してもらえます。 

準備しておきましょう -公証役場への提出物-

 まずは、どのような遺言内容にするのか決めておく必要があります。
 財産についてあらかじめ把握してから、「財産目録」を作成しておきましょう。
 その上で、公証役場へ提出するために次のような書類を準備します。

1.遺言者本人の印鑑証明書
 遺言者の本人確認のために使用します。
2.遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本
 相続人であることを確認します。
 実務上は、遺言の作成・執行がスムーズに進むように、「遺言者の出生から現在の戸籍謄本」および「推定相続人の戸籍謄本」をとって、「相続関係説明図」を作成しておきます。
3.相続人以外に遺贈する場合はその人の住民票
 受贈者を確認します。
4.遺産に不動産が含まれる場合は登記事項証明書及び固定資産税評価証明書(固定資産税納税通知書)
 不動産内容の確定と公正証書遺言の手数料計算に使用します。
5.証人になる人の住所、氏名、生年月日、職業が分かるメモ
 公正証書遺言に記載するために必要です。

 公証人手数料は、相続財産の価額によって決まります。詳しくはこちら「公証人連合会ホームページ」をごらんください。

 公正証書遺言には、法的効果のある事柄(遺言事項)のほかにも、自分の思いを記しておくこともできます。付言事項として、家族への感謝の言葉やなぜこのような遺言をしたのかを明らかにしておけば、相続時の紛争を回避できる可能性が高くなります。是非、「付言」を書き加えて、気持ちを伝えるようにしましょう。


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