遺言書を変更・取り消すには -遺言の撤回-

2016年10月28日(金)1:08 PM

 遺言書は、一度書いたら終わりではありません。後からいつでも何度でも、内容の訂正・変更や取り消しができます。
 ただし、遺言の書き方が厳密に定められているように、遺言の撤回についても規定があります。

 遺言を撤回する方法

 撤回は、すでに有効になされた法律行為を、その後に発生した新たな事情を理由に、将来にむけてその効力を失わせるものです。
 民法は遺言の撤回について、次のような方法を定めています。

  • 1.遺言による撤回

 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その全部または一部を撤回することができます(民法1022条)。
 また、前の遺言が後の遺言に抵触(矛盾)する場合は、その部分について後の遺言で撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。
 遺言を撤回する権利は放棄することができませんので、「この遺言は撤回しない」と宣言した場合でも撤回できます(民法1026条)。

 遺言書が複数ある場合は、最も新しい日付のものが優先します。
 次々と遺言書を書き換えて多数の遺言書が存在すれば、抵触する部分が複雑になってしまう可能性があります。
 新しい遺言を作成する場合は、「先に作成した平成○○年○月○日付の遺言書は、撤回します。」と文頭に記して、前の遺言そのものを撤回しておくようにしましょう。

  • 2.遺言と抵触する行為による撤回

 遺言が後でなされた生前処分その他の法律行為と抵触する場合も、遺言の内容が撤回されたものとみなされます(民法1023条2項)。
 例えば、「不動産甲を長男Aに相続させる」と書いていたにも関わらず、これを遺言作成後に長女Bに贈与した場合などです。

3.遺言書の破棄による撤回
 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされます(民法1024条)。

 複数の遺言書が存在すると、後の混乱やトラブルのもとになります。古い遺言書は処分するようにしましょう。
 ただし、公正証書遺言の場合は、公証役場に原本があるため、手元の正本や謄本を処分しても、無効にはなりません。このことは注意が必要です。
 また、遺贈者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様にその破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされます(民法1024条)。

遺言の撤回の撤回

 前の遺言書を撤回する遺言書が書かれた後、さらにこの遺言書が取り消されたら、どうなるのでしょうか。
 原則として、前の遺言書を撤回する行為が、撤回され、または効力を生じなくなった場合でも、前の遺言書は効力を回復しません(民法1025条)。
 つまり、後の遺言の撤回によって、前の遺言が自動的に復活するわけではありませんので注意しましょう。
 ただし、例外として、前の遺言の撤回が詐欺や脅迫によってなされた場合には、後の遺言が取り消された場合は、前の遺言が復活します(民法1025条ただし書)

 遺言による撤回は、同じ種類の遺言方法による必要はありません。
 公正証書遺言は、自筆証書遺言によって撤回することもできますが、後でトラブルになる可能性が高くなりますので、この場合は新たらしい公正証書遺言を作成するようにしましょう。

 


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